Miracle of Mermonte

普段あまり、自分が体験したことなどと書くことは無かったのですが…今回、僕はMermonteと言う奇跡的に生まれたバンドのこの目で確かめ、その音楽を体験するために、7月19日~22日にフランスの西部にあるブリタニー地方で毎年行われる国内最大フェスティバル“DES VIEILLES CHARRUES″に参加が決まった、彼らに同行しました。そこから始まった奇跡とこれまでバンドが結成された経緯を紹介します。









まず、Mermonteというバンドは10人編成で、殆んどのメンバーが10代のころからの地元のRennesと言う街で出会った音楽仲間で結成されています。基本メンバーは固定ですが、パートによってヘルパーで入れ替わることもあります。そして、Mermonteというバンドを語る上でもっとも重要な人物こそ、この“Ghislain Fracapane”です。 彼との出会いがあったこそ、このすばらしい体験をすることが出来きました。
Ghislain Fracapane
知っている人もいるかと思いますが、彼は、“fago.sepia”の中心人物でもあります。僕がfago.sepiaのCDを日本でリリースして、2010年に日本ツアーに招待したことがキッカケになります。決して、彼らにとってはすべて満足できるツアーを行うことが出来たかと思うと、 私自身が反省する点も多くありました。しかし、その経験と出会いによって、このMermonteと言うバンドに出会うことが出来たのも事実です。彼らが来日していた時に、彼が僕に「今度、また新しいプロジェクトを始めるんだ! デモが完成したらツネに送るよ!」って言ってくれたことが、最初の出会いの始まりです。当初は、あまり確信もなく、彼が制作する音楽だから、きっと素晴らしい作品が上がってくるだろうと思っている感じでしかありませんでした。その後も、コンスタントに連絡を取り続け、そして僕に対しても、心を開いてくれるようになりました。お互い直接ふれ合うことができたからこそ、彼らから信頼と言う気持ちが生まれて来たと実感しました。
そして、半年後に最初のデモソング5曲が上がってきました。fago.sepiaとは、
また違ったインストで、Mermonteの今の原型にあたり、彼一人で録音されたものでした。
その後、昨年9月にもフランスに訪れて、fago.sepiaの小規模なフランスとベルギーのツアーに同行して、Mermonteの状況について聞きました。ちょうど、レコーディング開始した段階でと各パートやメンバーが徐々に決まって、本格的に動き始めていました。そのときは、まだ10人ものバンド編成になるとは思っていませんでした。そして、Ghislainから「まだ、レーベルが決まっていないだけど…、リリースしてくれる?って相談されて…」2つ返事でOKをしました。(因みに最初にリリースが決まっていたのは、フランスではなく僕のレーベルからでした。)そのとき僕は、すごくワクワクした気分で彼らの音源を待っていました。彼らは、メンバーの自宅でレーコーディングまで自分たちで行って、最終のマスタリングのみスタジオで完成させる作業をしてます。(彼らの係わっているほとんどのバンドが同じような作業で完成させています。先日、fago.sepiaの新曲3曲をレコーディングしておりましたが…やはり、自分たちでMIXまで行い、マスタリングはスタジオで完成させていました。ちなみにfago.sepiaのMIXは、MermonteのMathieuが担当しています。彼は、fago.sepiaの日本ツアーに同行しました。)
昨年末には、すべてレコーディングを終わらせて完成する予定でしたが…。やはり、彼らのことなので、終わりませんでした。(fago.sepiaのときも結構待たされましたので…)年明けにはリリース日程を5月に決定していたので、2月までには終わらせて欲しかったけど、ボーナストラックの制作などで結局3月中旬になってしまいギリギリでした。 リリースは日本を始め、フランスとデンマークで発売が決定して、EUはVinylのリリースを日本より1ヵ月遅れて、6月にリリースになりました。(しかし、フランス国内でもCDの購入を求めるリスナーが多く、9月には新たにCDとジャケットを変更した、セカンドプレスのVinylをリリースする予定です。それは、9月から始まる大規模なEUツアーに向けての販売促進も考えていることでしょう。)


そして、4月5日に彼らが始めて地元レンヌでフリーライブを行った。それが、Mermonteとしての初お披露目でした。

フランスの有名な音楽雑誌「MAGIC」
その後、5月にはThis Town Needs Gunsのパリ公演でライブを行い、大きな反響を得ることができました。そして、6月に国内でもVinylがリリースされ、数多くのインターネットレビューサイトや TELERAMA、MAGICなどの有名な音楽雑誌にも大きく取り上げられました。
その他、インターネットレビューサイト
http://www.lesinrocks.com/
http://www.soul-kitchen.fr/
http://alter1fo.com
http://bretagne.france3.fr/
http://bleeckerstreetbeat.com

その話題性から、フランス国内最大のフェスティバル“DES VIEILLES CHARRUES″に推薦され、新人アーティストのステージ"jeunes charrues″で演奏することとなりました。初ライブから、たった5回目のステージで、フランスで一番大きなフェスティバルで演奏できると言うチャンスを掴だ、正に奇跡的な出来事でした。彼らは、最終日(4日目)の最初の演奏でした、4日間一緒にフェスに参加して、3日目に近所の知り合いの自宅の庭でリハーサルを行い、4日目の本番に迎えました。最初は、みんな演奏できるだけでも喜んでおりましたが、本番が近づくに連れてメンバーが一様に緊張のしているように感じ取れました。でも、そこはアーティスト、いざ本番を迎えたら、自分たちも楽しんでお客さんも楽しんでもらえるような演奏をしておりました。
それが、正に彼らが作り出した奇跡的な時間が流れているいるようにも感じました。彼らの存在を知らない多くのお客さんからも演奏終了後には、大きな拍手と歓声が上がったのを僕は今でも鮮明に焼きついています。

"jeunes charrues″での演奏の様子







やはり、新人アーティストと言うこともあって、寝泊りは4日間テント泊。毎回、食事の時間は、みんなで買ってもってきたパン、チーズ、果物を食べて、パーティーのようなに楽しみながらビールばかり飲んでいました。そして、リハーサルは、長閑な高台にある知り合いのお宅の庭で音合わせと本番に向けて練習をしました。(大きな音を出しても全く問題ない平原が広がっているような場所でした)。また、フェスには多くのメディアも訪れていることもあって、EU圏内やフランス国内のTV、ラジオ、インターネット関係の音楽情報サイト、各フェスのオーガナイザーなど多くの人がメディアブースに集って打ち合わせをしておりました。それは、日本では見ることのできないような貴重な体験でした。彼らは、新人と言うこともあり、自分たちでプロモーション活動を行い、ジャーナリストたちと話の場を作り、インタビューを持ちかけたり、また即興でアコースティック演奏したりと、多くの時間を費やしていました。

今回、彼らは新人アーティストの10組のステー
ジで行われた"jeunes charrues″で優勝して来年も同じフェスティバルの大きなステージで演奏することが約束されています。そして、これから彼らの成功するストーリーが綴られていくと思います。Mermonteの音楽に耳を傾けてもらい、一緒にこの先のストーリーを描いて頂ければ思っております。(ちゃっかり、自分も一緒に映っちゃいました。因みにGhislain本人はこのときに別の場所にいて映っていません。)


このPVには、Ghislain Fracapaneをメンバーや家族、友人たちが囲み、そこには人とのふれ合いが
あり、懐かしさと暖かさが感じ取ることができると思っています。
きっと、そこには音楽以上の人との繋がりの大切さを実感しました。
ひとりの人間として、自分がこんな素晴らしいバンドに出会えたことが何より幸せです。

僕自身は、レーベル運営やバンドで成功することが、もっとも重要だと思っておりません。(しかし、それらを続けていくには必要なことも十分にわかっているつもりです。)
ただ、音楽は聴いたり、演奏したりするだけの形式にとらわれがちですが、もっとも大切なものは、その音楽が起こす、体験や経験がその先に繋がる言葉の壁や習慣、文化を超えることがあると思っています。外国の人と接するには、外側だけでは何も知ることができないし、自分が内側に入って一緒に体験や経験することで始めて、その壁が破れて自分自身も成長できることだと思っています。今回の渡航で、レーベルのアーティストを始め、彼らの家族や友人など沢山の人に出会うことができました。それこそが正に貴重な体験でした。

そんな経験ができる自分は幸せかもしれませんが、今後もこのような形で音楽に携わっていこうか正直迷っています。普段、音楽とは無縁な仕事に日々追われている中で、個人でやることには限界を感じています。
また、いろいろな葛藤が日々あり、それ以上にリスクや壁にぶち当たることも多くあります。いつまで、どのような形で続けられるか、本当に分からないこの状況を時間の許す限り楽しみたいと思っています。そろそろ、自分のこの先を見つめ直して、次のステップに進むことを考えることもありますが、これからも彼らを見守り続けたいと思います。日々、音楽を取り巻く状況は、厳しくなっております。そして、音楽に対するそもそもの価値観が崩れてきている中で、少なくとも音楽に携わるものとして、「何処に価値を見出すか? また、どう係わっていくことができるか?」すごく難しい時代になって来ました。